ミ シ ン


母のミシンは崇高な薫りがする

マダムとマドモアゼルの夢を叶えてきた
魔法の機械・・・。

手の当たるところは黒光りしている

色とりどりの糸は宝石の輝きだ。

小さなピアノ


母のミシンの横には小さい朱色のピアノがある。


私の知っている母の姿は
いつの時もアトリエでデザインしたり

製図をしたり、裁断やミシンを使う姿だ。
夜が明けてみると魔法にかけられたように
新しいドレスやスーツが出来上がっていた。

それらは朝の光で眩しく輝いていた。

そんな洋裁一筋の母が70歳を過ぎてからピアノを買った。
幼いころからの夢だったらしい。

その年の年末に
母は「きよしこの夜」を弾いて聴かせてくれた。
習いたての旋律は母の作った洋服のように
とても繊細だった。

「クリスマスイブにお父さんの前で弾いて聴かせてあげたの。」
母はちょっぴり恥ずかしそうな笑顔で
私たちに話してくれた。

父と母にとっては
最高にロマンチックなイブの夜だっただろう。


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